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2016-07-26

リハビリテーションとピラティスの活用について

リハビリテーションの立場から見た疾患・障害の捉え方とピラティスをどのようにリハビリテーションに応用できうるかを示します。

リハビリテーションの理念

リハビリテーション(rehabilitation)は、現在の日本では機能回復訓練・社会復帰の意味で理解されていることが多いです。

本当の意味はより広いものになります。re-「再び」habilis-「人間にふさわしい」という語がついたもので個人にとって望ましくない状態になったときに再び望ましい状態に戻すことを意味する言葉になります。

障害を有する方とのリハビリテーション

障害とは「生活上の困難、不自由、不利益」のことです。

身体を動かすにあたっての神経系・運動器系・代謝系・循環器系に疾患を持ち生活上の困難を強いられている状態のことを言います。

リハビリテーションは「元の生活に戻ること」と理解されることが多いです。

しかし、リハビリテーションとは障害をきっかけに新しい人生を建設することです。

人間には、困難な状況に立ち至ったときにそれを対処するコーピングスキルというものがあります。

直ちに悪条件を否定するのではなく、その存在を認めた上でそれとうまくやっていくことであり、結局はそれを克服することです。

このコーピングスキルには身体的要素と心理的要素があります。

障害を有した身体と心理の受容がそれにあたります。

リハビリテーションにおいてコーピングスキルの開発を行うことで前と同じではないですが、Quolity of life(人生の質)という点において以前と勝るとも劣らない人生を建設することは不可能ではありません。

ここで例えば、元の生活に戻るといったことのみに目標を設定してしまうと、それが達成できないときに「全てが無に」感じてしまうことになりがちです。新しい可能性を模索し、障害を有した状況を認めた上でうまく付き合うという身体的・心理的状況を作り出すことがリハビリテーションです。

リハビリテーションの基本的アプローチ

治療的アプローチ

運動機能を中心とする身体機能の回復、高次機能障害の回復など広い範囲での治療活動にあたります。

代償的アプローチ

残存機能と潜在機能を最大限に利用して個人の総合的な能力の向上をはかることです。

環境改善的アプローチ

生活および仕事場における物的、人的な環境の改善をはかることです。

心理的アプローチ

適切な心理的サポートを行い、障害の受容をはかることです。

障害予防とリハビリテーション

リハビリテーション医学には「障害の予防」という意味での予防医学的な側面も存在しています。

早期から手を打てば、いったん疾患となり起こった機能障害も完全に回復あるいは軽減させることができます。

変形性関節症などの退行性疾患は早期から手を打てば手術に至らないケースが特に多いです。

機能障害[impairment]が続くことによって能力障害[disability]につながり歩行動作を代表とした生活上・社会上に必要な能力が失われてしまいます。それにより活動[activity]状況が低下し趣味や娯楽活動ができなくなることや参加[participation]といって周囲のコミュニティと関わる機会を失いがちになります。

また生活活動の低下によって寝たきりの状態に陥ることも少なくありません。

リハビリテーションとしてのピラティスの活用について

リハビリテーションという言葉の意味・内容を踏まえた上でピラティスは障害受容や機能促進に有効的です。

ピラティスのマシンを使いことで左右対称に関節を動かす機会を持つことは病院のリハビリテーションでは経験できないことです。ピラティスによって関節の円滑化がなされ、機能が向上すると歩行を代表とした運動能力が高まります。

以前と比較してよくなっている状況が確認できるので心理的にも活動的になることができることが期待できます。

また筋肉の質・関節の動きといった失われたものを取り戻していく感覚によって自分の身体の可能性に気付くことができると思います。

ピラティスをすることで先の自分を楽しむことができて自信をつけて欲しいと思っています。

自分に自信がつくことによって、自分だけでなく友人や周囲に目が向いてくると思います。そうすることで新しい周囲との交流や趣味・娯楽活動などをはじめとした個人にとってのQuolity of life (生活の質)のサポートをピラティスを主体として行えることを嬉しく思います。

上田 敏:標準リハビリテーション医学.医学書院,2007.

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