パーキンソン病の運動療法とは【ピラティスによるリハビリ】
パーキンソン病とは
パーキンソン病は、脳幹に属する中脳の「黒質」と呼ばれる部分と大脳基底核の「線条体」という部分に異常が起こることが明らかになっています。
脳は神経細胞の集合体です。脳では、様々な神経細胞のネットワークが様々な情報伝達を行い、体全体のバランスを保ち、生命を維持するように働いています。神経細胞同士の情報伝達には、「ドーパミン」「セロトニン」「アセチルコリン」と呼ばれる神経伝達物質が欠かせません。
パーキンソン病では、黒質に異常が起こって正常な神経細胞を減少させるためそこで作られるドーパミンの量が低下し、黒質から線条体に向かう情報伝達経路がうまく働くなっている状態にあります。このため、姿勢の維持や運動の調節速度がうまく行えなくなるなどパーキンソン病特有の症状が現れます。
パーキンソン病の一次的機能障害と二次的機能障害
パーキンソン病の症状から派生する一次的機能障害としては無動と姿勢異常、姿勢反射障害などがあります。
- 運動開始時または運動中のすくみ足
- 運動行為の減少
- 運動の切り替え困難
- 運動速度の遅延
- 回旋運動障害
- 非対称性運動の障害
- 2つ以上の運動の同時遂行困難
- 加速現象
- 立ち直り・平衡反応障害
- 易疲労性
パーキンソン病から派生する二次的機能障害としてははい廃用症候群、関節の拘縮、筋力低下、尿路感染症、うつ症状、不安感、筋緊張性頭痛などがあります。
パーキンソン病の障害度分類
パーキンソン病では五段階のHoehn-yahr分類が最も普及しています。この分類はADL(日常生活動作)との相関が高いです。
Stage Ⅰ
体の一側だけの振戦・固縮・無動を示し、軽症状であり、通常機能障害は軽微または見られない
Stage Ⅱ
両側性または身体中心部の障害で振戦・固縮・無動ともに両側に見られ日常生活がやや不便であるが、体のバランス障害は伴わない
Stage Ⅲ
歩行時の向きを変える時の不安定さや、立っている患者を押してみるとpulsion現象が見られるなど姿勢反応障害の兆候が見られる。日常生活動作障害も見られるが、職業によってはある程度の仕事も可能である。
Stage Ⅳ
日常生活動作の機能の低下が著しく、体の移動、立ち振る舞い、着物の着脱、洗面、排便などにかなりの支障をきたす
Stage Ⅴ
日常生活動作では全介助を要し寝たきりまたは車椅子の生活が余儀なくされる
パーキンソン病の運動療法
パーキンソン病の運動療法は著名な機能回復を目的にするのではなく、機能廃絶を予防して日常生活をできるだけ長く介助なくできることを目的にする場合が多いです。日常生活が不安感で溢れている状態であれば運動療法とともに日常生活指導もプログラムに入れていくことが推奨されます。
- 関節可動域練習
- 胸郭、横隔膜、体幹の運動
- 姿勢回復練習
- 基本動作練習
- 平衡練習
- 歩行練習
などを行います。機能維持・改善のためや運動自体の持久力・バランスの維持・改善を行うことはパーキンソン病を有する方にとって自身の状態を確認できる手段となることであったり、運動能力の維持は他のコミュニティと繋がりを持てる活力を保つことにつながります。
ピラティスにおける運動療法
パーキンソン病におけるリハビリテーションの内容を踏まえてピラティスの有効性としては、マシンを用いての両側の対称性の運動を行えること。また、非対称性の運動も行うことができます。
関節の円滑性を保ちながら、本人の活動性がどのような状態にあるかということに関して、実施するエクササイズによって本人が体感またはインストラクターの観察によって把握することができます。
実施するエクササイズは体幹から始まり上下肢の運動に移行しますので効果的に関節を動かすことができます。
様々な関節の動きを繰り返すことにより、筋肉や関節に固有に存在するセンサーの働きを高めてバランス機能を保ちます。
さらに、実施できるエクササイズが増えることにより本人の自身につながります。ピラティスによるリハビリテーションによって活力が生まれ、日々の生活や他のコミュニティでも楽しんで生活していただければ嬉しく思います。
上田 敏:標準リハビリテーション医学.医学書院,2007.